ルパン

ルパンは痩せていた

老いた体に鞭打つように、ヨロヨロと歩いていた

呼んでも、ジロリと目を向けるだけで、シッポさえ振らなかった


ルパンは汚かった

皮膚病で禿げた背中の毛がむしり上がって、痛そうだった

触ろうとすると、何するんだと言わんばかりに牙を剥いた


ルパンは嫌われていた

水産加工会社から出る生ゴミにたかる野良犬たち

その中でもルパンは、来るなと言わんばかりに足蹴にされていた


ルパンは病気していた

お腹に水が溜まって苦しそうだった

横になって、ドロリとした目だけを情けなさそうにこっちに向けた


春の晩、ルパンは死んだ

社員寮だった廃屋の裏庭で

フィラリアにかかって死んだ


お前、何かいいことが一度でもあったのかい?


ルパンは、ニヤッと笑った

あったさ、…ここに住めた

水産加工会社の近くにいられた

それだけでも幸せだったさ


一度、あんたがチクワをくれたことがあったなぁ

あれはうまかった…

人間はすごいな

あんなもん作れるんだものな


だけどな


あんた、お前って俺の人生にウリふたつだとか言ったなぁ

冗談言うな

野良犬は、お前みたいに、世を拗ねてるだけじゃ生きていけないよ


犬はいいなぁ、野良でもやっていけるもんなぁ

確か、そんなこと言ったよな

冗談言うな

人間の方がいいに決まってるじゃないか

甘ったれるのもたいがいにしろや


ルパンが死んでから、ひとりの男が立ち直った

だけど、それがなぜだったのか

誰も知らない








"ルパン" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント