短冊小説「アイスで有名な」

尾登さんは、まだ70代前半だ。

なのに、もうすっかり腰は曲がってしまっている。

顔もくしゃくしゃしていて、90と言ってもおかしくない。

だけど、声は大きい。

頭の方は、どうなんだろう?

よくわからない。

あやしいと言えば、怪しいが、まぁ普通と言えばふつうである。

この尾登さんが、出来れば今度の日曜日、近くのショッピングモールに車で連れて行ってほしいとおっしゃる。

快諾した。

だけど、妻はあそこは広いからはぐれると探しようもないと言い出した。

確かに、尾登さんは少し耳が遠いせいか、いつの間にかどこかへフラフラ行きそうだ。

心配になって、尾登さんに携帯を持って行ってもらうことにした。

試しに、クルマの中で尾登さんに電話してみた。

すぐ出られたので安心した。

さぁ、こうやっていよいよショッピングモールに到着した。

ちなみに、はぐれた時の待ち合わせ場所に、サーティーワンの前と決めた。

尾登さんに、名前を忘れたらアイスで有名なと言えばわかりますからねと念を押した。

そこまで警戒していたのに、まだ一階にいるときに、尾登さんの姿が見えなくなった。

ちょっと慌てたが、まぁ、向こうも子どもじゃないんだしと、こっちも買い物を済ませ、待ち合わせ場所についた。

待ち合わせ時間には、まだ20分ほどある。

「31」には、長い行列が並んでいた。

どうだろう、それから15分も過ぎただろうか、尾登さんの姿は見えない。

だんだん不安になって来たので、電話してみた。

「あたしはもう40分も前からそこにいますよ」とおっしゃる。

「えっ?」

キョロキョロ周りを見たが、姿はない。

他に周囲に何が見えるか、聞いてみた。

店の名前から2階ではないかと探しに行った。

案の定、本屋さんの前に尾登さんはいた。

「アイスで有名な」と言ったじゃありませんか、と妻がなじった。

「はい、言いましたよ。氷のサーティーンって」

そう言われた若者は、ゴルゴサーティーンの等身大看板の前と思ったらしい。

「あ、そうですか。尾登さん、これは、ゴルゴ13ですよ」

尾登さんは、不快気にハッキリ言った。

「そうだよ。ゴルゴ、サーティーワンだよ」




















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この記事へのコメント

2018年12月06日 14:09
ありますね、こういうこと ^ ^
自分の何十年後かを見る想いです。
昔、父方の祖母と草津へ行く際に
上野駅のホーム上で待合せをしたのですが
時間になっても現れず…
指定券を無駄にすることもできず
私達が諦めて乗車し少し走った所で
何と!
首を長くし辺りを見回す祖母を発見。
長いホームの下方(約束した反対方向)に
立っていたのでした。
念をおしておいたのですが
やはりだめでしたね~(苦笑)
そのことがあって以来、
祖母は二度と一緒に旅行へは
行きたがらなくなってしまいました。
想い出話をしてすみません<(_ _)>


2018年12月06日 22:32
うわーーっ、そういう状況ではぐれた人の姿を見つけると痛いですよねーーー。
叫んでもせんないですからねぇ。
そりゃ、おばあさまはもう旅行に行きたがらなくなる気持ち、痛いほどわかります。

ところで、ご近所のおばあさんが、ゴルゴサーティーワンと言ったのを聞いて、めちゃくちゃ大笑いしました。
ネタ元はそれだったんですが、この小説、もう一つ大笑いにならずにガッカリしています。
2018年12月07日 20:33
もう我慢できず、最後には大爆笑でしたー😆
2018年12月07日 23:34
おっ、そうですか、笑っていただけましたか。

よかった~~!

それにしても、ゴルゴサーティーワンって…!

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