小劇場 「君といた夏」抜けきらない症候群

医者「はい、次の方…」

患者「すみません。お願いします」

医者「どうしました?」

患者「はい、耳の中の音楽が消えないのですが…」

医者「ほーっ、どんな音楽がですか?」

患者「はい、ホッホー、フッフー、ララララララ…というやつです」

医者「あー、虫さんたちの歌ですね」

患者「よくご存じですね」

医者「もちろん知ってますとも!可児の医者ですからね」

患者「はぁ」

医者「で、音楽はいつから…?」

患者「ここ2日間、ずっと鳴ってまして…」

医者「そうですか、しかし、あの虫さんたちは可愛かったですね」

患者「ええ」

医者「えーっと、あなたは、(カルテを見て)ブラックごろーさん?」

患者「はい」

医者「あ、ひょっとして出演なさってました?」

患者「えぇ…」

医者「あー、そうですか…。それは、ちょっとまずいかもしれませんね」

患者「え?!」

医者「病名は、『君といた夏抜けきらない症候群』と言いましてね。一種の難病です」

患者「難病?!」

医者「ま、これまでも、似たような病気が可児、多治見方面で流行りましてね」

患者「えぇ」

医者「3年前の『君といた夏抜けきらない症候群』、4年前の『わが町可児抜けきらない症候群』…」

患者「3年前にも…」

医者「はい、多治見方面の女性の方で重傷だった方がうちにもお見えになりました」

患者「で、その方は…?」

医者「いや、結婚されましてね。だいぶ、落ち着かれたのですが、またねぇ、この症候群に罹りたいという気持ちがふつふつと強くなっていらっしゃるみたいです」

患者「え、罹りたいって、病気にですか?」

医者「はい…」

患者「いえ、はい…って、おかしいでしょ。…病気にですよ」

医者「それが、この症候群の大きな特徴でしてね」

患者「そ、そうなんですか」

医者「ま、俗に言う『舞台病』のひとつですね」

患者「はぁ」

医者「一度罹ると、せっかく治ってもまた罹ろうとするんですね」

患者「へー」

医者「いや、へー、じゃなくって、あなたも多分、その中毒に侵されてます」

患者「中毒?」

医者「えぇ、中毒です。麻薬と一緒でなかなか抜けきらない」

患者「ゲッ!」

医者「有名な標語がありましてね…」

患者「なんですか、標語って?」

医者「人間やめますか、芝居やめますか、――聞いたことありませんか?」

患者「いえ、…え、まぁ」

医者「それです」

患者「中毒系だと医療保険の方は?」

医者「あなた、ブラックごろーさんですよね。通院補償も加入されてますから大丈夫です」

患者「…よかった」

医者「時に、あなた、楽屋はどなたと一緒の部屋でしたか?」

患者「えぇ、不良グループの高校生たちと一緒でした」

医者「え、さっとん、よっちゃん、ジョモ、まーちゃん、あすかのグループですか?」

患者「はい」

医者「それ、いよいよ、まずいなぁ」

患者「どうしてですか?」

医者「やっさんとかだいすけは、なるべく部屋にいないようにしてたでしょう?」

患者「そ う で し た」

医者「あなた、ベチャーっと一緒にいたんですか?」

患者「えぇ、まぁ」

医者「少しバカがうつったでしょう?」

患者「はい」

医者「それ、もう、かなりの末期症状です」

患者「えーーーーっ、困ったなぁ」

医者「まぁね、末期でしたら、3年後までほっときましょう」

患者「ほっとくしかないのですか?」

医者「バカは死ななきゃ治らない、あれと一緒ですね」

患者「……………!」



※「君といた夏」抜けきらない症候群に羅られたみなさんへ

  今回の舞台は、感動が大きかったぶん、すぐ末期症状まで行ってしまいます。
  特に、感染力の強い高校生グループと接触された方は、ご注意ください。
  抵抗力の弱いお年寄りの場合は生命の危険さえあります。 

  3年後のミュージカルまで、自宅療養に専念してください。

  これは、あくまで裏技的な治療法ですが、ゆーこりんの美しい歌声を聞けば若干緩和されてくる方も
  いますが、かえって症状を深刻にされる方もいます。お医者さんの忠告に従ってご使用ください。 
  








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この記事へのコメント

2015年03月11日 10:25
楽しかった感動が心の中を駆け巡っているのですね。
青春ですね。
2015年03月11日 12:27
今のそのお気持ちにしばらく漂っているのも
快感であり、刹那でもありますね
夢中になれることがある、うらやましいです。
2015年03月11日 14:38
夢中になれることがある。
これって素晴らしいことだとなぁ と
私も そう思います。

そしてこのシンドローム(想い)を
こんな風に表現できる文才をお持ちの
ごろーさんも・・・

2015年03月11日 17:44
What's up?さんのお見立ては、青春ですか…。
さすがに67で「青春」病はきついですよね。
でも、この病気は医療費がかからないので、しばらくかかってようと思います。(笑)
2015年03月11日 17:50
らん太郎さんも新しい舞台に立たれたばかりじゃないですか。ぼくのは遊びの舞台ですが、らん太郎さんのは真剣勝負の舞台。成功した時の快感はぼくたち遊びの比じゃないと思います。ぼくには、もう味わえない人生のひのき舞台です。ぼくの方こそ羨ましい。
2015年03月11日 17:59
歓楽極まって哀情多し。
小枝さん、どちらかと言えば、今はそういう気分です。
文才?
小枝さんには遠く及びません。
でも、心のセンサーだけは錆びつかせたくないと思います。
炊飯姫
2015年03月12日 15:57
以前かかった患者です(笑)
この病気は観劇した3年前の出演者にも感染している模様です(笑)
客席で上記の方々何人かお会いしたところ、そんな雰囲気でした。

懐かしいですねー。
しかし結婚後、諸事情でなかなか動けずにいて、現在は観劇が精一杯の状況です。
これじゃ「復帰します詐欺」ですよね(笑)
ちなみに炊飯姫は、
裏技であるこの方の歌声を出身の地元で聞いてしまったが為に、症状が悪化しております(笑)
2015年03月12日 23:49
「復帰します詐欺」の炊飯姫さん、病院の方では3年ぶりになりますね。(笑)
そうですか、裏技で悪化された?なんとなくわかります。同性同士だと悪化することが多いという統計結果も出ていますから。
ま、いろんなご事情もおありでしょうが、もう一度この病気に罹られることをお勧めします。

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