エディット・ピラフ

ぼくの演劇仲間にハンゾーくんという若者がいる。
この「ハンゾー」という通り名を彼がいつから称しているのか知らないが、多分わが町以前からだろう。
いずれにしても、ご想像通り、本名が服部くんだから「ハンゾー」なのだが、服部姓の男子だと何割くらいがあだ名などでそう呼ばれるのだろうか?

似たような例として、「渡辺さん」=「ナベさん」はほぼ100%に近いのではないだろうか?
こっちは、男女ともそう呼ばれるから人口比率はかなり高いはずである。
誰かが、その昔喫茶店で「ナベさん、電話ぁ…!」と叫んだら、七人の人が立ち上がったというホントの話を聞かされたことがあるが、その確率がどんなもんだったのかは知らない。

ところで、この間、愛知学院に向かう途中で、時間があったので喫茶店に入った。
ぼくは一人だったので、カウンターの端の席に座った。
ところが、ぼくの背中の席にすわっている大学生と思しき男子がやけに鋭い視線でぼくを見た。
明らかに、怒りの目をしている。
なんだろう?と怪訝な気持ちになったのだが、しばらくして、彼の気持ちはお隣りの老人と建設業の若社長風の人の会話にあると思われた。
「いい加減にしろよ」と言わんばかりの視線を結構あからさまに送っている。

お隣りの老人がシャンソン歌手の話をしているのだが、「エディット・ピラフ」、「エディット・ピラフ」と何度もおっしゃる。
そのたびに、彼はギロリと老人を睨むのである。
そして、ついに、彼はレシートを手に立ち上がると、お隣りの老人にこう言った。
「すみません。どうしても気になったので言わせてください。『エディット・ピラフ』は間違いです。正しくは、ピ・ア・フです。エディット・ピラフではなくて、エディット・ピアフです」。

お隣りの老人は、しばらく唖然としたような顔をされていたが、その若者をじっと見上げたままこう言った。
「フランス語の正しい発音だとピ・ラ・フなんだよ」。
それがまた、鼻にかかった、いかにもフランス語らしい流暢な発音だった。

若者は「えっ?」という感じで、「とんだ失礼を申しました」と飛び上がらんばかりの勢いで店を出て行った。
件の老人は何事もなかったかのように話し続けていた。
何者なんだ?と思ったが、今日気になっていたのでウィキペディアで調べてみた。
どう見ても「ピアフ」である。
フランス語の正しい発音でも「ピラフ」にはなりそうにない。

隣にいた若者の顔が浮かんだ。
かれもきっとウィキペディアで調べてこう叫んでいたはずだ。

「チキショーーー!だまされたーーー!!!」



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