Yくん-2

リフト乗り場では、Yくんが一番に並んでいたのだが、もう少しで乗り場というところでYくんの前に並んでいた女の子がバランスを崩し、反射的に下にいたYくんにしがみついたものだから、二人はスキー板をからませたまま、極めて不恰好に上がり口からドスンと下に落ちた。
大した事にはならなかったが、結局、Yくんはもう一度列に並び直すことになってしまったのである。

上で待っているとYくんが、さんざん怒りながらやってきた。
「おい、ここはどういうスキー場だい?係員が女の子には『大丈夫ですか?』って救護室に連れて行ったのに、おれには『申し訳ありませんが、列は並びなおしてください』だと、バカヤローが…」。

一番上手なNくんが、Yくんの怒りの声を完全にスルーして「みんな、はぐれたらあそこで落ちあうことにしよう」とちょっと上の窪地を指さした。

お昼ごはん後、四人がそこに集まった。
Nくんなどは午前中だけで何本滑ったかわからないくらいだったから、スキー板を斜めにしてベッドがわりにして休んでいた。
一番最後にYくんが、変な顔をしてやってきた。
「どうした?」
「いや、急にお腹が痛くなった。下痢っぽい」

Nくんが目までずり下げていたキャップを押し上げてこう言った。
「おい、Y!おっきいほうをするなら、向こうに行ってやれよ」。
「わかってるよ!」、Yくんはブツブツ言いながら、奥の方へ移動して行った。

しばらくして、Yくんが叫んだ。
「いけねぇ。紙忘れた。誰かティッシュ放ってくれよ」

「しょうがねぇヤロウだな」
めずらしくNくんがパッと立って、ティッシュを手に声の方に向かっていった。
その後は二人の声だけが聞こえてきた。

「来んなって!」
「だって、そこまで投げられないもん」
「いいから、そこから投げろって!」
「わかった!前の方に投げるから自分で拾えよ」

そんな会話の後、Nくんが笑いながら「くせぇ!くせぇ!」と聞えよがしに言って、戻ってきた。
そして、みんなにこんな格好でしてるというジェスチャーをして見せてくれた。

その時だった。


















「あっ!あっ!あーー!」

なんとも言えない慌てた叫び声が聞こえてきた。
















と、同時に、
ズボンをずり下げたYくんが、後ろに倒れたまま、手だけでブレーキを掛けて、
リフト乗り場の列に突っ込んでいくのが見えた。



「きゃーーーーっ!」
みたくないものを見た女の子の叫びが響いた。


係員が飛んでいくのがこちらからもわかった。





Yくんは、逃げるように宿に帰っていった。
そして、みんなの止めるのも聞かず、東京へと帰っていった。

若い頃は、ちょっとしたことで死にたいくらい傷ついた。
この時のYくんもそうだったのだろう。

あれから約40年。みんな、どうしてるんだろう。
Nくんが「おい、注意しろ、Yにアノ話すると飲んだ席でも殴られるぞ!」と忠告してくれた。
今だったら、あの時の話をしても大丈夫なんだろうか?

気になる。

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この記事へのコメント

めい
2011年06月03日 08:02
朝からおもしろすぎる話ありがとうございましたうれしい顔うれしい顔うれしい顔うれしい顔うれしい顔
2011年06月03日 11:01
本当におもしろ過ぎる・・・
朝帰りで若干眠かった炊飯器ですが
この笑いで目が覚めました(笑)

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