ブタさん

初めてのお客様のところを女子社員と訪問した。
応接に待たされていると、その娘が「ちょっと、お手洗いに…」と中座した。
そこに担当の方がいらっしゃった。
アラフォーくらいの女性の方であった。

型通り、名刺を交換する。
販促部課長代理 「部田○○」。

名刺と同時にはっきりとした口調で「とりたです」。

「あぁ、服部さんのトリですか…なるほど」、「さすが、パッとわかられましたね。だいたい、聞き直される方がほとんどでして…」。
そんな会話をしているところに女の子が、戻ってきた。

そして、ぼくの名刺を覗き込んで、こう言った。

「あらっ、珍しいお名前なんですね。…ぶたさん」
その瞬間、その方の頬がひきつったのがわかった。

おそらく、小さい頃から言われ続けて、それだけは言ってほしくなかったのだろう。

結局、なんとなく気まずい雰囲気の中で商談はうまくいかなかった。

帰りの車の中で、うちの女子社員が妙に荒れていた。
「だいたい、課長代理って何?!」
そこじゃない。
「だって、どう見たってそうしか読まないでしょ!」

そう言って荒れてたくせに会社についた途端に今度は声を殺して笑い出した。
ぼくのほうが、その変りようにギョッとしていた。
女の子の心理はほとほとつかみにくい。



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