自作詩「もう一度言ってください」

もう一度、ちゃんと聞いておきたかった言葉がある

母は、病室のベッドの脇でうつらうつらするぼくに何か言いかけた

「え?なに?」

ぼくは慌てて聞き直した

母は、珍しい動物でも見るような眼でぼくをじっと見つめた

決して弱々しい視線ではなかった

「なんか言った?」

もう一度聞くと、にっこり笑って目を閉じた


母は、この後転院して亡くなった

そして、今日

書きかけのハガキが届けられた


半分から先が真っ白な空白の先頭に、

「ところで、あなたは」と書きだしの言葉だけが記してあった

何か特別言いたかったことがあったのだろう

あの世でもう一度会った時に聞くしかないが、

たぶん笑って、「さぁ、なんだったかしらね…」と答えるのだろう


もう一度言ってください

どんな嫌なことでも構いません

どんなお叱りでも構いません

どんなくだらないことでも構いません

いまさらですが、もう一度言ってください

いまは無性にあなたの声が聞きたいのですから



















ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 8

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント

2015年04月29日 21:06
こんばんは。

こちらの詩とても心に響きました。

末期癌による余命3ヶ月の宣告を受け
そのとおりに逝ってしまった母。
しかし余命は母に隠そうと決め…
その瞬間から苦悩との闘いでした。

母に聞いておく必要のある重要な
事柄を尋ねることは一切、禁句に。
が、気丈で 勘の働く母は逆に
こちらに鎌をかけてきました。
煙草を吸ってくると
喫煙室に向かうため病室を
出て行こうとした夫に対して、
「癌になるよ…」と、母。

その眼は虚ろなくせにしっかりと
娘の私を叱咤するようで。
何かを言わんとしている、
あの眼光を
忘れることは出来ません。

「母の発する〝声〟が聞きたい…」
この想いを共感出来るうれしさに
満たされている今宵です。
今回も素晴らしい詩を
どうも有難うございました。

まだこもよ
2015年04月29日 22:19
うちの義祖母は…まさに亡くなる寸前に回りをみんてして(と言っても目を動かしただけだが…)その後なにか口を動かして…亡くなった。私は何を言ったのか?だったが 奥さんは「ありがとうね」と言った…と…。意識が混濁してる感じだったから…本当に言ったかどうかは?だけど… まだ意識がしっかりしていた時に「よろしく頼んだよ」としきりに言っていたようだが…ちょいと?な娘(義母)の「世話」を頼んでいったのかも?で…兄さんにはお母さんは何を聞きたかった(言いたかった?)のだろうか?謎を解く「鍵」が…どこかにあるのかも???、
2015年04月30日 08:27
ありがたすぎてその存在に気付かなくて
時間を遡っては昔の記憶の中をたどりながら
いつか私も後を追って
そしてまたかならず会おう
きっと会える
その時に
あやまろう
ごめんなさい....って

それまでは元気で生きていこうと
思っております。
ごろーさんのページを拝見して鬼の眼に
涙がこぼれてしまいましたよ
2015年04月30日 11:09
小枝さん、いつも心のこもったコメントありがとうございます。
ぼくは、母が癌とかで痛みに苦しみながら死ぬようなことがなかっただけで十分幸せだったと思っています。
老衰による心不全というお医者様の診断でしたが、それでもやはり老衰でよかったとは思えないでいます。
ぼくは、老衰って、機械のバッテリーが切れるようにいつの間にかスッと亡くなっていたというイメージがありましたから、何日も死に抗った母の姿からとても老衰とは思えなかったのです。
どちらにしても身近な人の死は、辛いものですね。
2015年04月30日 11:17
こもちゃん、そうだね、>謎を解く「鍵」が…どこかにあるのかも?
心静かにして、それを探してみることにします。
母は、お前の家は、娘たちもいいところに嫁いで、元気な孫たちにも恵まれ言うことなしだねってよく言ってました。
貧乏していてもみんな元気だったらそれでいうことなしなんだよって。
でも、その後に何か付け加えたいことがあったんでしょうね、きっと。
こも弟のお蔭で、兄はだいぶ落ち着けてます。ありがとう。
2015年04月30日 11:23
asakunさん、わざわざのご返礼痛み入ります。
ずっと気持玉も付けていただいていて、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

老人になれば、もっと冷静に暮らせるようになると思ってきましたが、70歳を前にして想い惑い悩む毎日です。
全然ダメ老人です。
どうか、違う違う、こっちこっちってお導きください。
お願いいたします。

この記事へのトラックバック