自作詩「人間だけに許された言葉の意味」

朗読用に作った詩を掲載します。(ABCD、4人用!)


[前説]A
わたしたち、ふくろうの会は、
詩と詩のコラボ朗読をご披露させていただきます。

大好きな詩を
大好きな詩の朗読でサンドイッチして、ご紹介させていただきます。

なお、詩中の詩は、

●クリスティーナ・ロセッティ作 西條八十訳 「風」

●工藤直子作 「花」

●多田智満子作 「風」

●ロバート・ブラウニング作 上田敏訳  「春の朝(あした)」の

四篇です。

では、始めます。

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B「人間だけに許された言葉の意味」    

少年はその時、ただただ広い田園の真ん中にいた

少年と同じに若々しく伸び始めた蒼い稲穂は

風になでなでされながら、ゆるく上半身をくねらせていた

少年の頭に一篇の詩が浮かんだ

C「誰が風を見たでしょう?
僕もあなたも見やしない、
けれど木の葉を震わせて
風は通り抜けていく

誰が風を見たでしょう?
僕もあなたも見やしない、
けれど木立が頭を下げて
風は通り過ぎていく」

B少年は大声で叫びたい衝動に駆られた

だから、大声で詩を吟じた

その時、一陣の風がスッと吹いた

稲穂の葉は一斉に同じ方向へ舞った

ことばが風に舞いながら

遠い空の神様のところへ飛んでいった

少年は、人間だけに許された言葉の意味と

朗読の力強さをこの時、知った




C少女はその時、ただただ広い海原の真ん中にいた

少女と同じように若々しく輝き始めた真っ白なかもめが

風になでなでされながら、ゆるく広げた羽をくねらせていた

少女の頭に一篇の詩が浮かんだ

D「わたしは
わたしの人生から
出ていくことはできない
ならば ここに
花を植えよう」

C少女は大声で詩を歌った

その時、一陣の風がスッと吹いた

少女は予感した

自分の人生のどこかで幸せの種が綺麗な花をつけるはずだと

だから、その日から少女は

寂しい時は好きな詩を朗読した

詩の一輪挿しは

少女の心を慰めた

少女は、人間だけに許された言葉の意味と

詩のもたらす癒しの喜びをこの時、知った




A青年の男女はその時、ただただ広い都会の真ん中にいた

青年たちと同じようにまっすぐに伸びた銀杏の並木が

風になでなでされながら、黄色く色付いた葉をくねらせていた

若い男女の頭に一篇の詩が浮かんだ

B「人ごみの中で
風が私を吹き抜ける
私はひとつの管(くだ)
そしてやがてひとつの音
目を閉じたホルンから
すべり出て
しずかに大都会を吹き抜ける」

A若い男は詩を声にした

その時、一陣の風がスッと吹いた

若い女が一緒に唱和した

ふたりの声は大都会の雑踏に揉まれながら

それでも立ち消えることなく

ことばの痕跡を残した

だから、神様はふたりに「愛し合う」という言葉をプレゼントした

青年の男女は、人間だけに許された言葉の意味と

詩を歌にする楽しさをこの時、知った




D年老いたふたりはその時、ただただ広い高原の真ん中にいた

年老いたふたりと同じように老いた桜の老木が

風になでなでされながら、桜の花びらを散らしていた

年老いたふたりの頭に一篇の詩が浮かんだ

A「時は春、
日はあした
あしたは七時
片岡に露みちて
あげひばり名のり出て
かたつむり枝に這い
神、そらに知ろしめす
すべて世は事もなし」

D年老いたふたりは詩を声にした

その時、一陣の風がスッと吹いた

ふたりは、ことばが薄く透き通ったのを感じた

年老いたふたりは、人間だけに許された言葉の意味と

最後にはことばもカタチをおぼろにすることをこの時、知った

おぼろになった言葉たちは

桜の花びらと一緒に

過ぎ行く時をハラハラと惜しみながら

ひとつづつ、ひとつづつ、そっと消えていった


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